相続した不動産を売却する際の流れと注意点

親の家や土地を相続したものの、維持管理が難しい、税金の負担が大きいなどの理由で売却を考えるケースは少なくありません。しかし、相続不動産の売却には通常の売却とは異なる手続きが必要です。本記事では、相続した不動産を売却する際の流れと、注意すべきポイントを詳しく解説します。

相続した不動産を売却するまでの流れ

相続不動産を売却するには、以下のステップを順番に進める必要があります。

① 相続登記(名義変更)を行う

相続した不動産を売却するには、まず被相続人(故人)の名義から相続人の名義に変更しなければなりません。2024年4月からは、相続登記が義務化され、3年以内に手続きをしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。

【必要書類】

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 遺言書または遺産分割協議書(必要な場合)
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書(法務局で提出)

② 相続税の確認と納税

相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続税が発生します。相続税の申告・納付期限は、相続開始(被相続人の死亡)から10ヶ月以内です。

③ 不動産の査定を依頼する

売却前に、不動産の価値を把握するために不動産査定を行います。査定方法には以下の2種類があります。

  • 机上査定:不動産の立地や過去の取引データを基に概算価格を算出する。
  • 訪問査定:不動産会社の担当者が現地を確認し、詳細な価格を見積もる。

④ 売却活動を開始する

査定価格を参考に売却価格を決定し、不動産会社と媒介契約を結んで売却活動を開始します。媒介契約には以下の種類があります。

  • 専属専任媒介契約:1社の不動産会社に売却を依頼し、自己発見取引は不可。
  • 専任媒介契約:1社の不動産会社に依頼するが、自己発見取引は可能。
  • 一般媒介契約:複数の不動産会社に依頼可能で、自由度が高い。

⑤ 売買契約の締結

買主が見つかると、売買契約を結びます。契約時には手付金(売買価格の5~10%程度)を受け取るのが一般的です。

【必要書類】

  • 登記簿謄本
  • 固定資産税納税通知書
  • 売買契約書
  • 印鑑証明書
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)

⑥ 引き渡しと残代金の受領

売買契約後、残代金を受け取り、鍵を引き渡します。その際、所有権移転登記を行い、買主へ名義を変更します。

相続不動産を売却する際の注意点

1. 「取得費加算の特例」を活用する

相続した不動産を売却する際、相続税を支払っている場合は「取得費加算の特例」を利用でき、売却益(譲渡所得)を抑えることができます。

2. 3,000万円特別控除の適用条件を確認する

相続した不動産を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除する特例が適用されます。ただし、相続後に長期間放置すると適用されない可能性があるため、早めの売却が推奨されます。

3. 複数の相続人がいる場合の遺産分割協議

相続人が複数いる場合、遺産分割協議で売却の合意を得る必要があります。協議がまとまらないと売却ができず、長期間のトラブルになるケースもあります。

4. 売却タイミングを考慮する

不動産市場の動向をチェックし、売却のタイミングを見極めることが重要です。例えば、地価が上昇している時期に売却すると、高値で売れる可能性が高まります。

まとめ

相続した不動産の売却は、相続登記・税金申告・売却手続きなど、多くのステップが必要です。特に、2024年からの相続登記義務化により、迅速な名義変更が求められます。また、「取得費加算の特例」や「3,000万円特別控除」などの税制優遇を活用することで、税金負担を軽減することができます。

売却をスムーズに進めるためには、不動産会社や税理士に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。適切なタイミングで売却を進め、相続不動産を有効に活用しましょう。

タイトルとURLをコピーしました