夫婦間で不動産を共有するために持分を追加したい、ローン返済を手伝ってもらったので名義を変更したいなど、さまざまな理由で不動産の名義変更を検討するケースがあります。しかし、名義変更は単なる「書き換え」ではなく、税務上は財産の移転とみなされるため、状況によっては贈与税が課税されるリスクがあります。本記事では、夫婦間の名義変更に贈与税がかかるケース、節税のポイント、注意すべきリスクについて詳しく解説します。
1. 夫婦間の名義変更で贈与税が発生する仕組み
税務上、名義変更は「対価を支払って取得したかどうか」が重要な判断基準となります。もし不動産の一部や全部を無償、もしくは著しく低い価格で配偶者へ移した場合、名義変更=贈与と判断され、贈与税が課される可能性があります。
贈与税は、年間110万円を超える贈与に対してかかるため、持分割合が大きく変わる場合は特に注意が必要です。
2. 贈与税がかかるケースの具体例
- 無償で持分を渡した場合
例:夫100%名義 → 妻50%名義へ変更(妻が対価を支払っていない) - 著しく低い価格で売却した場合
市場価格3,000万円の持分を数百万円で譲り渡すなど - 住宅ローンの肩代わりが贈与とみなされる場合
妻がローン返済に参加していないのに名義だけ追加するケース
3. 贈与税がかからないケース
対価を正当に支払っていることが証明できれば、贈与税はかかりません。代表的な例を挙げます。
- 妻が名義変更分に相当する金額を実際に支払った場合
振込記録や領収書などの証拠が重要です。 - 夫婦共同で住宅ローンを返済しており、その割合に応じて名義を付け替える場合
- 夫婦間の居住用不動産の贈与特例
一定条件のもと、配偶者控除により上限2,000万円まで贈与税が非課税。
4. 注意すべきリスク:配偶者控除の誤用
「配偶者控除(おしどり贈与)」により、婚姻期間20年以上の夫婦間では居住用不動産の贈与が2,000万円まで非課税になります。しかし、この特例には条件があり、誤用すると税務署から否認されることがあります。
主な条件は以下のとおりです。
- 婚姻期間が20年以上である
- 居住用不動産またはその取得資金の贈与である
- 翌年の確定申告で適用を申請する
- 贈与を受けた不動産に実際に住むこと
適用を誤ると、結果的に高額の贈与税が発生する可能性があります。
5. 低額譲渡とみなされるリスク
名義変更の際に「実際に支払いをしているが、価格が相場より安すぎる」場合も注意が必要です。税務署は次のような観点で判断します。
- 売買価格が適正な時価と比較して不自然ではないか
- 支払いの流れが明確か(口座の動きなど)
- 住宅ローンの返済割合と名義割合が一致しているか
時価の7〜8割を大きく下回る価格での譲渡は、贈与とみなされるリスクが高まります。
6. 贈与税を回避するための実務的な対策
- 対価の支払いを証拠として残す
名義追加分の価格を明確にし、銀行振込で支払い記録を残す。 - 不動産の評価額を事前に把握
不動産会社の査定書や公的評価額を参考に、適正価格で名義変更をする。 - 夫婦共同ローンに変更する
返済負担と名義割合を一致させることで贈与扱いを避けられる。 - 配偶者控除(おしどり贈与)の正しい適用
条件を満たす場合は控除が利用できるため大幅な節税が可能。 - 司法書士・税理士に事前相談
名義変更の方法を誤ると高額な税負担につながるため専門家の助言は有効。
まとめ
夫婦間の不動産名義変更は、適切に行わなければ「贈与税」という大きな落とし穴があります。しかし、対価の支払いを明確にする、共同ローンにする、配偶者控除を正しく活用するなど、税務上のリスクを避ける方法も豊富にあります。名義変更を検討している場合は、税務署や専門家に相談しながら進めることで、安心して手続きを行うことができます。大切な不動産だからこそ、正しい知識と適切な対策でトラブルを防ぎましょう。
