親族間で不動産を売買するケースは珍しくありません。実家を子どもが購入する、兄弟間で所有権を移転する、親の財産整理のために不動産を売るなど、さまざまな事情があります。しかし、親族間売買には一般の売買にはない独特のリスクがあり、対策を講じていないと税務署から「贈与とみなされる」「不当に安い価格だ」と指摘される可能性があります。この記事では、親族間で不動産売買を行う際のリスクと、その対策をわかりやすく解説します。
1. 親族間売買とは?
親族間売買とは、通常の不動産会社を介さず、親子・兄弟姉妹・祖父母と孫など、親族同士で不動産を売買することを指します。関係性が近いため話がスムーズに進む一方で、法的なチェックが甘くなりやすく、後々のトラブルにつながるリスクも多く存在します。
2. 親族間売買の主なリスク
① 贈与税が発生する可能性
親族間売買で一番大きなリスクは、贈与とみなされることです。市場価格より大幅に低い金額で売った場合、その差額が贈与と判断され贈与税が課税されることがあります。
例:
市場価格2,000万円の家を1,000万円で売った → 差額1,000万円が贈与と判断される可能性
② 住宅ローンを組めないことがある
金融機関は親族間売買に慎重であり、住宅ローン審査が通りにくい傾向があります。適正価格での売買や不動産会社の関与がない場合は、特に審査が厳しくなります。
③ 相続時に揉める原因になる
親族間の売買は、他の相続人に「不公平だ」と思われる可能性があります。
- 兄弟のうち一人だけが安く買った
- 売却益が一部の家族に偏った
- 事前に共有されていなかった
こうした不透明さが後の相続争いにつながることがあります。
④ 売買契約が曖昧になりやすい
親族間だからという理由で、契約内容が曖昧になりがちです。
- 瑕疵(かし)担保の扱いを決めていない
- 引き渡し条件が曖昧
- 設備の故障や修繕費の負担が不明確
「言った・言わない」というトラブルにつながります。
⑤ 適正価格の設定が難しい
不動産は感情が入りやすいため、適正な価格を客観的に判断できなくなりがちです。相場より高くても低くても問題が生じます。
3. 親族間売買で必要な対策
① 適正な価格で売買する
まず最も重要なのは相場価格に基づいた適正価格で売買することです。以下の方法で価格を把握できます。
- 不動産会社の査定を複数取る
- 固定資産税評価額と比較する
- 不動産鑑定士に正式な評価を依頼する
適正価格であれば、税務署から贈与と判断されるリスクが大きく減ります。
② 正式な売買契約書を作成する
親族間でも、一般の売買と同じように契約書を正式に作成しましょう。
- 売買価格
- 引き渡し日
- 設備の有無
- 瑕疵担保責任(不具合の責任)
必要であれば司法書士・行政書士に作成を依頼すると安心です。
③ 住宅ローンを利用する場合は銀行と相談する
親族間売買でローンを使う場合は、対応している金融機関を選ぶことが大切です。親族間でも審査可能な銀行もあるため、事前に相談しましょう。
④ 他の親族にも情報共有する
将来の相続を見据えて、家族全員に経緯を共有しておくことが重要です。
- 売買価格の根拠
- 売却する理由
- 誰が買うのか
後から「知らなかった」「不公平だ」と言われるリスクが減ります。
⑤ 税務上の判断が必要な場合は税理士に相談
贈与税・譲渡所得税・登録免許税など、税金の扱いは複雑です。専門家に相談することで、リスクを避けつつ最適な方法で売買できます。
4. 親族間売買が向いているケース
状況によっては親族間売買がメリットを持つこともあります。
- 親が家を売りたいが、子どもがそのまま住みたい
- 名義を子へ移して管理を引き継ぎたい
- 相続トラブルが起きないよう事前に整理したい
しかし、その場合でも「形式は通常の売買と同じ」が鉄則です。
5. まとめ:親族間売買は入念な準備と透明性が必須
親族間での不動産売買は、感情的な判断になりやすく、税金・価格・相続など複数のリスクが潜んでいます。しかし、適正価格での売買、正式な契約書、専門家への相談など、対策をしっかり行えばリスクを最小限にできます。親族間だからこそ、通常の売買以上に丁寧で透明性のあるプロセスが必要です。正しい知識と準備を整え、後悔のない不動産取引を進めていきましょう。
